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厚生労働科学研究費補助金 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(所属施設役職は当時のもの)

抄録一覧

アレルギー疾患に係わる胎内・胎外因子の同定に関する研究
研究主任者
  森川昭廣(群馬大学大学院小児生体防御学教授)

研究分担者
  足立 満(昭和大学医学部第一内科教授)
  荒川浩一(群馬大学医学部小児科講師)
  大田 健(帝京大学医学部内科教授)
  小田嶋博(国立療養所南福岡病院診療部長)
  河野陽一(千葉大学医学部小児科教授)
  近藤直美(岐阜大学医学部小児病態学教授)
  徳山研一(群馬大学医学部小児科助教授)
  吉原重美(獨協医科大学小児科講師)
   (アイウエオ順)


研究要旨
アレルギー疾患は、遺伝的要因と環境的要因(胎内・胎外因子)が複雑に絡み合って発症していくと考えられている、近年、日本を含む世界各国においてアレルギー疾患患者の増加が報告され、胎内・胎外因子が変化してきたことが疑われる。本年度は、遺伝的要因とウイルス感染など環境要因との直接的な関わりを明らかにするために、ウイルス感染症と自然免疫との関連、遺伝子発現との相互作用を検討し気管支喘息の発症および増悪の機序を中心に研究をすすめ、本年度は以下の結果を得た。

1)胎内因子
アレルギー疾患、発症に関わる胎内因子として、疫学的調査にて、妊娠中の母親のアレルギー症状や感染が発症背景因子に寄与していた(小田嶋)。また・母親の妊娠中における種々の要因が児のアレルギー疾患発症と関連するかを前方視的に検討するプロジェクトが進行中で、さらに臍帯血のサイトカインやケモカイン、増殖因子と、その後のアレルギー疾患発症の有無を検討する予定である(荒川)。自然免疫の受容体でRSウイルスと関連の深いToll様受容体一4(TRL一4〉の遺伝子多型と喘息との関連およびその機能的な面が検討された(河野)。Th1/Th2バランスを規定する因子としてIL-12の関与が想定されるが、そのプロモーター領域のDNAメチル化によりIL-12の発現が制御されている可能性が示唆された(森川)。

2)胎外因子
RSウイルス感染時に、IL-12やIL-19受容体遺伝子の転写発現においてRNA修飾現象やsplicing現象がみられ、アレルギー疾患との関連が示唆された(近藤)。気道上皮細胞株へのRSウイルス感染では、Gene Chipを用いた検討で、サイトカインやケモカイン産生が著明に増加し、その発現順序や時期等に関して現在検討している(吉原)。ウイルス感染モデルであるdsRNA刺激により、TLR-3を介して気道上皮からエオタキンンの発現が認められた(足立)。INF一γは転写レベルでエオタキシンの発現を抑制する可能性が示唆された(荒川)。アレルゲンの反復曝露による気道過敏性と気道リモデリングは年齢により変化する可能性を示した(徳山)。マウスのタバコ曝露モデルにおいて、長期曝露は気道炎症を増悪し、喘息に影響を及ぼすことが示唆された(大田〉。

本研究は、アレルギー疾患である気管支喘息の発症要因を多方面より検討し、その原因解明および治療にもつながる意義深いものに発展することが期待される。



A.研究目的
アレルギー疾患は、遺伝的要因と環境的要因(胎内・胎外因子)が複雑に絡み合って発症していくと考えられている。遺伝的要因とウイルス感染などの環境的要因との関わりを明らかにするために、ウイルス感染症と自然免疫との関連、遺伝子発現との相互作用を検討し、気管支喘息の発症および増悪の機序を明らかにすることを目的とした,これら因子を解明することにより、アレルギー疾患発症増加の制御に役立て、それが国民の健康増進に大きく貢献するものと考えられる。

B.研究方法および C.研究結果
胎内因子:
近年の小児アレルギー疾患の急激な増加の原因を明らかにするために、疫学的調査による諸因子の解明は重要である。今回、生後1歳でのアレルギー疾患、特に喘息発症に影響する因子を解明するため、九州・関東・東北地区で調査した。その結果、出生時体重が大きく、在胎週数が少ないほどアレルギー疾患発症が多かつた。母親および家族のアレルキー歴と相関し、感染では、生後初めての疾患が気道感染
で、かつその数が多いほど喘鳴の発症が多かった。(小田嶋)。

疫学的調査に加え、母親の妊娠中における種々の要因が児のアレルギー疾患発症と関連するかを前方視的に検討するプロジェクトが進行中で、それに加えて、臍帯血、中のサイトカインやケモカイン、増殖因子などを測定し、その後のアレルギー疾患発現の有無を検討する予定である(森川・荒川)。

アレルギー疾患増加の原因として、胎内を含め乳児期の感染の減少によThl/Th2バランスの成熟がなされないというhygiene hypothesisがある。
Thl/Th2バランスを規定するものとしてTh1へ傾けるIL-12の発現量の違いが関与する可能性が想定されるが、そのプロモーター領域にDNAメチル化が存在し、発現が制御されている可能性が示唆された。これは、すでにプログラムされているものであるか、あるいは感染など胎内・胎外因子によるかは今後の検討が必要である(森川・滝沢)。

胎外因子:
喘息発症に関与する胎外因子として重要と考えられる気道感染、特にRSウイルスにつき検討した。
まず、RS感染の受容体であるtoll-like受容体-4(TRL-4〉は自然免疫の受容体として注目されている。
そこで、アレルギー疾患発症に、TRL-4受容体(TRL-4、CDl4)の遺伝的差異が影響しないかを検討した。その結果、CD14については-159C/Tの多型を確認し、機能的に、CD14TT型はcc型と比較しIL-12の発現が少なかった。1L-12の減少はTh2へのバランスに傾けるためアレルギー疾患との関係が示唆される(河野・下条)。

実際にRS感染が起こったときの生体反応について検討した。アレルギー患者の末梢血単核球を用い、ウイルス感染によりどのようなサイトカイン産生が見られ、IgE産生に影響が見られるかを検討した。
その結果、ウイルス感染後に、IL-4産生には大きな変動はなかったがINF一γは大きな変動を示し、回復期にはアレルギー疾患児ではIL-12やIL一18が有意に増加していた.その機序としてIL-12やIL-8受容体のediting現象やAlternative splicingが関連している可能性が示唆された(近藤)。

また、in vitroの系として、ヒト肺胞上皮細胞にRSウイルスを感染させ、GeneChipを用いて遺伝子発現量を定量的に測定した、その結果、約12,OOOの遺伝子のうち、対照と比較して約50〜200種類の遺伝子が強く発現誘導され、1型TFN誘導遺伝子群(IFTT1、lSG15など)、炎症性サイトカイン群(IL-6、IL-1βなど)、CCおよびCXCケモカイン群(RANTES、MCP-1、IL-8など)が含まれていた(吉原・山田)。

次に、ウイルス感染による分子レベルでの細胞反応性の検討をおこなった。すなわち、気道ウイルス感染によるケモカイン産生の分子レベルの機序を解明する目的で、気道上皮培養細胞にウイルス感染モデルであるdsRNA刺激を行った結果、IL-9、mNTES、RANTES、lP-10濃度はdsRNA刺激後、有意に産生増加が認められた。この刺激はTRL-3を介し、転写因子としてNF-κBやIRF-3が関与する可能性か示唆された。また、喘息治療薬であるフルチカゾンで抑制が見られた(足立・国分)。

さらに、肺線維芽細胞を用いて、エオタキンン産生と感染時に発現が増強するIFN-γとの関連を検討した結果、IL-4は濃度依存的にエオタキシンのプロモーターを活性化し、1FN-γの前処理にて、IL-4誘導性のエオタキシン産生は、RT-PCR、プロモーターアッセイでともに抑制された。また、大気汚染と関連するオゾン曝露では、エオタキシン発現を誘導し、IL-4と相加作用を示した(荒川)。

最後に、最終的に喘息発症と直接関連すると考えられる気道過敏性の獲得および持続における年齢的な因子とウイルス感染と同様に重要である受動喫煙について検討した.新生仔および成熟BALB/Cマウスに、卵白アルブミン(OA)で感作し、チャレンジ開始後にpenhを用いた気道過敏性の経時的変化について検討した、その結果、気道感受性は成熟マウスにおいては8週まで持続したが、気道反応性については幼若マウスでは4週で消失していた。すなわち、幼若マウスでは成熟マウスに比べて気道過敏性は早期に収束することが予想された(徳山)。

BALB/Cマウスを用い、喫煙暴露、卵白アルブミン感作につき検討した。その結果、短期喫煙曝露では、BALF中細胞数および気道過敏性は抑制傾向であったが、長期曝露ではマクロファージおよび好中球の増加を認め、TNF-αおよびMIP-2の増加を認めた。長期喫煙曝露は、気道炎症を増悪し、喘息に影響を及ぼすことが示唆された、(大田)。

D.考察および E.結論
本年度の結果は、胎内因子として、母親のアレルギー疾患、感染を含めた要因が重要であることが示され、さらに、遺伝的な要因として自然免疫の遺伝子多型やIL-12のプロモーター活性などが関与している可能性が示唆された。一方、胎外因子としてウイルス感染により、その受容体を介した刺激によるIL-12産生あるいはINFの産生調節により、Th2バランスに傾き、IgE産生が促進されアレルギー疾患発症に向かう可能性が示唆される。さらに、ウイルス感染によるケモカイン発現により、好酸球、好中球などが動員され、気道炎症を導く過程も示唆された。胎外因子である環境要因として重要な喫煙暴露は、アレルゲン感作と平行して行った場合直接の気道過敏性増強効果は認めなかったが、好中球エラスターゼ惹起の炎症については相乗効果を認めた。幼若マウスを用いた慢性アレルギー性気道炎症モデルにより、幼若マウスでは成熟マウスに比べて気道過敏性が早期に収束することから、アレルギー性気道炎症の消退に年齢的な因子が関与する可能性が示唆された。本研究は、アレルギー疾患である気管支喘息の発症要因を多方面より検討し、アレルギー疾患の原因解明および治療にもつながる、意義深いものに発展することが期待される。

研究協力者(あいうえお順)
青柳正彦(国立療養所下志津病院アレルギー科医長)
足立哲也(帝京大学医学部内科講師)
阿部利夫(獨協医科大学助手)
井上祐三朗(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
大木康史(群馬大学小児科助手)
大柴晃洋(東京医科歯科大学小児科)
川口未央(昭和大学医学部〕
川野豊(横浜赤十字病院小児科部長)
國分二三男(昭和大学医学部助教授)
斎藤博久(国立成育医療センター免疫アレルギー研究部部長)
佐伯敏秋(北里大学小児科〕
七種美和子(横浜市衛生研究所ウイルス研究室)
下条直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学講師)
鈴木修一(千葉大学大{河院匿学研究院小児病態学)
滝沢琢己(群馬大学大学院小児生体防御学)
堤裕幸(札幌医科大学小児科教授)
平塚純一郎(国立療養所南福岡病院小児科)
冨板美奈子(千葉大学医掌部附属病院助手)
長瀬洋之(帝京大学医学部内科助手)
中野純一(帝京大学医学部内科講師)
沼田朋子(千葉市立青葉病院小児科)
野間剛(北里大学小児科講師)
星岡明(千葉県こども病院アレルギー科主任医長)
本村知華子(国立療養所南福岡病院小児科)
松倉聡(昭和大学医学部)
松本健治(国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部アレルギー研究室室長)
黛博雄(群馬県立小児医療センター医長)
森川みき(JR仙台病院小児科医長)
山下直美(帝京大学医学部内科助教授)
山田酪美(獨協医科大学小児秤肋手)
山出晶子(千葉県こども病院アレルギー科)
渡辺美砂(東邦大学医学部小児科医員)

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