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小麦加水分解物含有石鹸「茶のしずく」を使用したことにより発症する小麦アレルギーに関する情報センター

  1. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーについてのFAQ(一般の方向け)
  2. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーについて疾患概念と診断の目安(医療従事者向け)
  3. 全国の"茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギー診療可能施設
  4. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーと診断された患者さんへ
  5. このホームページについて

「茶のしずく石鹸」を使用したことにより発症する小麦アレルギーについて疾患概念と診断の目安(医療従事者向け)

はじめに

小麦は成人の食物アレルギーの原因の中で最も頻度の高いもののひとつです。特に成人で発症する小麦アレルギーは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis; WDEIA)という形で発症する例が多く、誘発時に現れる症状は全身性の膨疹を特徴とすることがよく知られています。このような小麦依存性運動誘発アナフィラキシーは、我々アレルギー科医が診療する食物アレルギー症例の中でもっとも頻度の高い臨床亜型の中の一つです。(この文章の中ではこの臨床亜型を通常型のWDEIAと表現させて頂きます。)

ところが2009年頃から、このような全身性の膨疹を特徴とする小麦の運動誘発アナフィラキシーではなく、眼瞼の発赤・腫脹と顔面の皮膚のかゆみの発赤・蕁麻疹を主要な臨床症状とする、これまでの臨床経験からすると非典型的な女性の成人小麦アレルギー症例が多数報告され、それらが皆“茶のしずく石鹸”という加水分解コムギというグルテンの加水分解物を含有する洗顔石鹸を使用していました。その後の詳細な臨床的観察と血清学的な検討から、これらの非典型的な小麦アレルギー症例は、“茶のしずく石鹸”中の加水分解コムギに対する固有の過敏性を獲得しており、結果的に経口摂取による通常の小麦成分に対しても過敏性を示すようになっていることが示されました。

同様の症例が2010年に入ってから複数の施設で20例以上の報告されたため、2010年10月15日に厚生労働省医薬食品局安全対策課から、「小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品による全身性アレルギーの発症について」という注意喚起がなされました。しかしながら、その後も同様な症例の新規発症の報告が後を絶ちませんでした。最終的には2011年5月20日にこの製品の自主回収が決定されました(小麦加水分解物含有石鹸“茶のしずく石鹸”の自主回収について)。

2011年5月20日時点で該当症例は67例とされていますが、多くの症例が未診断、未報告であると推測され、真の該当小麦アレルギー患者は、全国でかなりの数に及ぶものと推察されています。

このページは、“茶のしずく石鹸”を使用したことにより発症する小麦アレルギーの病態と診断の目安、長期管理の方法等を、医療従事者の方々に情報提供させて頂くために作成いたしました。“茶のしずく石鹸”以外の加水分解コムギ含有石鹸、シャンプー・その他の化粧品によっても同様に小麦アレルギーが発症する可能性が考えられますが、それに関しては未だ十分な知見が集積されていません。

( 目次 )

  1. 疫学
  2. 病態
  3. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの診断
  4. 通常型のWDEIAと“茶のしずく石鹸"により発症した小麦アレルギーの鑑別
  5. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの急性期管理
  6. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの長期管理
  7. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの長期予後
  1. 疫学
    疾患の有病率はいまだ明らかになっていない。最近の新規医療機関受診症例の頻度では通常型のWDEIA症例の半数程度の新規発症症例が観察されている。
  2. 病態
    (準備中)
    (一般向けFAQを参照してください)
  3. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの診断
    日本アレルギー学会 化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会から2011.10.11付けで「茶のしずく石鹸等に含まれた加水分解コムギ(グルパール19S)による即時型コムギアレルギーの診断基準」が発表されましたhttp://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?page=article&storyid=114。その内容を以下に転載いたします。

    <茶のしずく石鹸等に含まれた加水分解コムギ(グルパール19S)による
    即時型コムギアレルギーの診断基準 >

    (化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会作成 2011.10.11)

    【確実例】

    以下の1,2,3をすべて満たす。
    1.加水分解コムギ(グルパール19S)を含有する茶のしずく石鹸等を使用したことがある。
    2.以下のうち少なくとも一つの臨床症状があった。
    2-1)加水分解コムギ(グルパール19S)を含有する茶のしずく石鹸等を使用して数分後から30分以内に,接触蕁麻疹(痒み,眼瞼浮腫,鼻汁,膨疹など)が出現した。
    2-2)小麦製品摂取後4時間以内に痒み,膨疹,眼瞼浮腫,鼻汁,呼吸困難,悪心,嘔吐,腹痛,下痢,血圧低下などの全身症状がでた。
    3.以下の検査で少なくとも一つ陽性を示す(備考参照)。
    3-1)グルパール19S 0.1%溶液,あるいは,それより薄い溶液でプリックテストが陽性を示す。
    3-2)ドットブロット,ELISA,ウエスタンブロットなどの免疫学的方法により、血液中にグルパール19Sに対する特異的IgE抗体が存在することを証明できる。
    3-3)グルパール19Sを抗原とした好塩基球活性化試験が陽性である。


    【否定できる基準】

    4.グルパール19S 0.1%溶液でプリックテスト陰性


    【疑い例】

    1,2を満たすが3を満たさない場合は疑い例となる。
    *ただし1,2を満たすが3を満たさない場合でも,血液特異的IgE抗体価検査やプリックテストでコムギまたはグルテンに対する感作が証明され,かつω5グリアジンに対する過敏性がないか、コムギおよびグルテンに対する過敏症よりも低い場合は強く疑われる例としてよい。

    詳細はhttp://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?page=article&storyid=114を確認してください。

    欧州から、加水分解コムギの経皮経粘膜感作により、加水分解コムギの経口摂取(注 加水分解コムギは食品添加物としても使用されている)により食物アレルギー症状を来す症例が報告されている。このような症例は通常の小麦製品は問題なく摂取できるとされている。本邦で“茶のしずく石鹸”によって発症した症例で、このような加水分解コムギに特異的な食物アレルギー症例は現在までに報告されてないが、そのような症例が存在する可能性は十分にあり得るので注意が必要である。

    “茶のしずく石鹸”使用と関係なく発症した“普通の”小麦アレルギーとの鑑別が一番問題になるので、次項に示す項目も参考にして頂きたい。

    WDEIAの負荷試験の実施に関しては島根大学医学部皮膚科学教室のホームページ http://www.med.shimane-u.ac.jp/dermatology/index.htmを参考にして頂きたい。

  4. 通常型のWDEIAと“茶のしずく石鹸"により発症した小麦アレルギーの鑑別

    “はじめに”で記述したように“茶のしずく石鹸”使用と関係なく発症した“普通の”小麦アレルギーの多くは、全身性の膨疹を主要症状とするWDEIAとして発症する(通常型WDEIA)。通常型のWDEIAと“茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギーは、いずれも運動誘発アナフィラキシーという病態で発現することが多いので、その意味で非常に類似している。しかしながら、両者の鑑別はその病因検索、長期管理の立場から非常に重要である。両者の鑑別に有用な情報を以下に示す。

    4-1 病歴からの鑑別

    “茶のしずく石鹸”の使用歴の有無が当然ながら最大の鑑別ポイントで、“茶のしずく石鹸”の使用が小麦アレルギーの発症に先行することが原則である。典型的な症例では“茶のしずく石鹸”使用時に接触性の即時型アレルギー症状(眼・鼻のかゆみ、顔面の接触蕁麻疹やかゆみなど)の病歴を持っているが、接触性の即時型アレルギー症状の病歴を持たない症例も少なくない。可能性としては、元々自然発症した小麦アレルギーであった症例が、当該石鹸を使用したために加水分解コムギアレルギーを重複して発症する可能性も否定はできない。

    4-2 血清学的な鑑別(特異的IgE抗体検査)

    通常型のWDEIAはω-5 グリアジン特異的IgE抗体価(ImmunoCAPR, ファディア社)が高いことが特徴的であるが、”茶のしずく石鹸”により発症したアレルギー症例では、ω-5 グリアジン特異的IgE抗体価は低値もしくは陰性になることが分かっている。少なくともこれまでに”茶のしずく石鹸”により発症したと考えられるアレルギー症例では、ω-5 グリアジン特異的IgE抗体価よりもグルテン特異的IgE抗体価のほうが高値であった。

    4-3 小麦アレルギー誘発症状による鑑別

    “茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギー症例の小麦による誘発症状は、眼瞼の発赤・腫脹、くしゃみ鼻水、顔面のかゆみ蕁麻疹を中心として多彩な症状を来すが、通常型のWDEIAは主要症状は蕁麻疹である。

    <通常型のWDEIAと“茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギーの鑑別のポイント>

    通常型のWDEIAと“茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギーの鑑別のポイント 注) 島根大学皮膚科学教室受診症例の統計
  5. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの急性期管理

    一般の食物アレルギー・アナフィラキシーと同様の治療でよい。

  6. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの長期管理

    感作源のコントロールがもっとも重要である。当該石鹸の中止は言うまでもないが、加水分解コムギは製品が異なっても抗原性は比較的類似しているため、その他の加水分解コムギ含有石鹸やシャンプー・その他の化粧品も使用を中止するべきである。

    “茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギーはWDEIAとして発症することが多いため、まず小麦摂取後の運動(小麦摂取後4時間以内の運動)は禁止するべきである。NSAIDs内服後の小麦摂取も、小麦摂取後の運動と同様にアナフィラキシー誘発作用があるため禁止する(概ねNSAIDs内服後、そのNSAIDsの血中濃度が上がっていると思われる間は禁止する)。NSAIDs内服自体は、小麦摂取との組み合わせがなければ問題はない。

    “茶のしずく石鹸”により発症した小麦アレルギーはWDEIAとして発症することが多いが、画一的に小麦摂取後の運動を禁止するのみでは、食物除去が不十分な症例も少なくない。病歴を詳細に聴取して、運動の組み合わせがなくても症状が誘発されている病歴を持つ場合は、小麦摂取自体を禁止したほうが無難である。

    パン、麺類などの明らかな小麦食品のみならず、小麦がある程度の量混入している食物、例えば、カレー、天ぷら、唐揚げ、ハンバーグ(パン粉)、ソバ(つなぎに小麦)、肉の加工品(時々加水分解小麦を含む)にも注意を促す。醤油に入っている程度の小麦では通常問題になることはない。

    通常の食物アレルギーの場合と同様に、アレルギー症状誘発時の対処方法を指導し、必要があればアドレナリン自己注射液の処方を行う。抗ヒスタミン薬等の予防内服は必須ではないが、主治医の判断により補助的に行ってもよい。

  7. "茶のしずく石鹸"を使用したことにより発症する小麦アレルギーの長期予後

    “茶のしずく石鹸”の使用を中止後、経月、または経年的に小麦やグルテンに対する特異的IgE抗体価が低下傾向を示した症例が報告されている。従って、感作源がコントロールできれば(つまり、石鹸の使用を中止すれば)、小麦アレルギー症状は改善することは期待し得る。しかしながら、現在までのところ完全に寛解した症例の報告はない。


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