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アレルギー情報センターガイドラインアトピー性皮膚炎

ガイドライン

アトピー性皮膚炎


目次

■はじめに

■定義

■治療の原則

■合併症しやすい感染症

■副作用

■今後期待される薬剤

■治療を続けていく上で


はじめに



今や国民の3割がアトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息などのアレルギー性疾患を持っているといわれており、これらの疾患はもはや国民病とさえいってよいと思われます。アトピー性皮膚炎については、特にステロイド外用薬に対する一部の偏った情報により、ステロイド忌避、拒否症の患者が増加し、さらに医学的根拠のない治療法が一部の医師あるいは医師以外のものによってなされ、患者を肉体的、精神的、経済的に苦しめている実情があります。ここでは2010年にまとめられたアトピー性皮膚炎治療ガイドラインを説明し、アトピー性皮膚炎に対する正しい理解と適切な治療を行う必要を述べ、指針として役立てていただきたいと思います。




定義



日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎の定義、診断基準」によれば、アトピー性皮膚炎とは、「増悪、寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされています(表1)。アトピー素因とは:(1)家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)、または(2)IgE抗体を産生し易い素因のことです。

表1 アトピー性皮膚炎の診断基準

表1 アトピー性皮膚炎の診断基準

アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010より引用

つまりアトピー性皮膚炎とは、「アレルギー体質の人に生じた慢性の痒い湿疹」で、症状としては痒みを伴うこと、発疹は湿疹病変で、急性の病変としては赤くなり(紅斑)、ジクジクしたぶつぶつ(丘疹、漿液性丘疹)ができ、皮がむけてかさぶたになる(鱗屑、痂皮)状態です。慢性の病変としてはさらに皮膚が厚く硬くなったり(苔癬化:Fig.1)、硬いしこり(痒疹)ができたりします。発疹はおでこ、目のまわり、口のまわり、くび、肘・膝・手首などの関節周囲、背中やお腹などに出やすく、左右対称性に出ます。乳児期は頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に拡大していき、思春期、成人期になると上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向があります。ドライスキンもより顕著になってきます(Fig.2)。また、慢性に経過する疾患で、乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上継続するものをいいます。

Fig1 Fig2

その他診断の参考になるものとして、家族に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎があるか、過去に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎などがあったか、血清IgE値の上昇があるかなどがあります。 ただし以下のような湿疹病変を生じる他の疾患を鑑別する必要があります。 接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、単純性痒疹、疥癬、汗疹、魚鱗癬、皮脂欠乏性湿疹、手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため) その他アトピー性皮膚炎の定義、診断基準の中では重要な合併症として、特に顔面の重症例に多い眼症状(白内障、網膜剥離など)、単純ヘルペス感染症の重症型であるカポジー水痘様発疹症(Fig.3)、伝染性軟属腫(水いぼ)、伝染性膿痂疹(とびひ)(Fig.4)などがあげられます。

Fig3 Fig4

これとは別に厚生省心身障害研究においてもアトピー性皮膚炎の診断の手引きが作成されています。日本皮膚科学会の診断基準は全年齢を対象としたものであるのに対し、厚生省心身障害研究班のそれは小児を対象にしたものですが、両者は大筋において矛盾するものではありません。

重症度は
軽 症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる。
中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる。
重 症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる。
最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる。
と分類されます。




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治療の原則



正しい診断、重症度の評価をした上で、原因、悪化因子の検索と対策、スキンケア(異常な皮膚機能の補正)、そして薬物療法が治療の基本となります。

1)原因、悪化因子としては2歳未満の場合には順に食物、発汗、環境因子、細菌真菌などがおもなもので、13歳以上の場合には環境因子、発汗、細菌真菌、接触抗原、ストレス、食物などが考えられます。2歳から12歳までは乳幼児から成人のパターンへ移行していく過程です。しかし個々の患者によって原因、悪化因子は異なるのでそれらを十分確認してから除去や対策を行います。
2)スキンケア(異常な皮膚機能の補正)
アトピー性皮膚炎における主な皮膚機能異常とは、水分保持能の低下、痒みの閾値の低下、易感染性をいいます。
スキンケアには、

1. 皮膚の清潔を保つには以下のことに気を付けてください。
(1) 汗や汚れは速やかにおとす。
(2) 強くこすらない。
(3) 石鹸シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものを避け、十分にすすぐ。
(4) 痒みを生じるほどの高い温度の湯を避ける。
(5) 入浴後にほてりを感じるような沐浴剤、入浴剤を避ける。
(6) 入浴後に適切な外用剤を塗布する。
2. 皮膚の保湿のためには以下のことに気を付けてください。
(1) 入浴シャワー後は必要に応じて保湿剤を使用する。
(2) 患者ごとに使用感のよい保湿剤を選択する。
軽微な皮膚炎は保湿剤のみで改善することがあります。
3.
その他に気を付けることとして以下のようなものがあります。
(1) 室内を清潔にし、適温適湿を保つ。
(2) 新しい肌着は使用前に水洗いする。
(3) 洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する。
(4) 爪を短く切り、なるべく掻かないようにする。

3)薬物療法
薬物療法の基本は以下の通りです。

1.
ステロイド外用薬は強さ、軟膏、クリームなど剤型がいろいろあるので重症度に加え、個々の皮疹の部位と性状及び年齢に応じて選択する(表2)。強度と使用量をモニターする習慣をつける。長期使用後に突然中止すると皮疹が急に増悪する事があるので、中止あるいは変更は医師の指示に従う。

2.
ステロイド外用薬は顔面にはなるべく使用しないようにする。使用する場合でも、可能な限り弱いものを短期間にとどめるよう気を付ける。
3.
症状の程度に応じて、適宜ステロイドを含まない外用薬を使用する。
4.
必要に応じて抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を使用する(表3)。
5.
使用状況と症状の推移によって外用の変更を考慮する。使用状況と症状の推移によって外用の変更を考慮する。

表2 主なステロイド外用薬の臨床効果分類
(軟膏、クリームなどの基剤の違いにより効力が異なるものも見られる)

表2 主なステロイド外用薬の臨床効果分類

アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010より引用

表3 アトピー性皮膚炎に用いられる主な抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬

表3 アトピー性皮膚炎に用いられる主な抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬

アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010より引用

長期間のステロイドの内服は全身的な副作用の発現を引き起こし、アトピー性皮膚炎の治療としては、外用療法に比べて危険性の方が高いと考えられるので、最重症例に一時的に使用することはありますが、原則としては使用しません。
薬物療法の基本を、重症度別に概略を示しますが(表4)、1−2週間をめどに十分な効果が認められた場合にはステップダウン(より弱い治療の選択)し、逆に十分な効果が見られない場合にはステップアップ(より強い治療の選択)します。
16歳以上の場合には免疫調整剤であるタクロリムスの外用(プロトピック軟膏0.1%)が、2〜15歳には同0.03%が使用できます。ステロイド外用薬の副作用の出やすい部位やステロイド外用薬の効果の見られない病変部に使用し、特に顔面、頸部の症状に有用性が認められています。
免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)の内服は既存の治療に抵抗性のある16歳以上の患者で、3ヶ月以内に休薬することが使用指針により求められています。

表4 薬物療法の基本例

表4 薬物療法の基本例

アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010より引用




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合併症しやすい感染症



伝染性膿痂疹(とびひ)

多くは黄色ブドウ球菌による感染です。ステロイドの外用で炎症は抑えることができるが、菌数の増加が起こりうるので、抗菌薬の外用、内服などを併用します。

伝染性軟属腫(みずいぼ)

pox virusによる感染症であり、アトピー性皮膚炎患者に生じると掻破により多発しやすい傾向があります。ステロイド外用により増加するので外用を中止したほうがよいと考えられます。

カポジ水痘様発疹症

単純ヘルペス感染症ですが湿疹病巣に感染すると急速に拡大し、全身症状を伴います。ステロイドの外用は中止し、抗ウィルス薬を外用、内服、または入院の上点滴する必要があります。




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副作用



ステロイド外用薬の局所の副作用としては、皮膚の萎縮、血管拡張、毛のう炎などが主なものです。特に顔面において発現しやすいので、顔面の症状に対してステロイドはできるだけ使用せず、使用するときは弱いものを短期間にとどめ特に注意深く観察することが望まれます。体幹、四肢ではこれらの副作用は比較的まれですので、皮疹の程度に応じた適切な強さの外用療法を行えば、副作用は生じにくいものです。

ステロイド外用薬の局所の副作用としては、皮膚の萎縮、血管拡張、毛のう炎などが主なものです。特に顔面において発現しやすいので、顔面の症状に対してステロイドはできるだけ使用せず、使用するときは弱いものを短期間にとどめ特に注意深く観察することが望まれます。体幹、四肢ではこれらの副作用は比較的まれですので、皮疹の程度に応じた適切な強さの外用療法を行えば、副作用は生じにくいものです。

抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の副作用としては、眠気、だるさなどが主なものです。また抗コリン作用があり、痰の喀出困難などが起こることがあります。抗アレルギー薬に分類される第2世代以降の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が弱く、また眠気を起こしにくいものが多いが、かなり個人差があります。




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治療を続けていく上で



ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の治療において、炎症を制御する薬剤としては現時点で最も有効かつ有用な薬剤であり、これを抜きにして治療を続けることは困難です。いかに副作用の出ないレベルで発疹をコントロールして行くかが重要ですが、皮膚科医の立場としては、毎回発疹をみてその症状に適した治療薬を選択していくことが必要です。症状が変わらないからと受診せず家族が薬だけ取りに来たり、他人によく効いたからとその薬を自分で勝手に使用したりするのは避けなければなりません。また状態が良くなると通院しなくなってしまう患者がみられますが、自分で勝手に中止しないでできるだけ定期的に通院することも重要です。

この病気は慢性の病気で体質までは直らないこと、根治は困難でもコントロールは比較的容易であり、薬を使いながらうまく病気と共存していけば日常生活を送る上ではそんなに困難な病気ではないのだと発想を転換することがアトピー性皮膚炎と向かい合うために必要と思われます。治療のゴールは”cure”(治癒)ではなく”care”(症状を抑えること)を目指すことです。




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